2009/10/28

大岡昇平『野火』

「たべてもいいよ」

この台詞が、忘れられなくて。



この台詞の前後の、人肉を食べるかどうするかというシーンだけ知っていました。

全体を通して読んだのは、今回が初めて。

徐々に、確実に何かが壊れ麻痺していく怖さ。

読み進めていくだけで胃が痛む。

それが一気に吐き気としてくるのが、「たべてもいいよ」からのくだり。

ここからさらに、崩壊が加速していく。

生々しい描写は忘れられなくなりそう。


Amazon→『野火 (新潮文庫)

2009/10/23

井上ひさし『井上ひさしと141人の仲間たちの作文教室』

井上ひさしが岩手県一関市で行った講座を基に作られた本。

自分にしかかけないことを書くための極意を、さまざまな面から語っている。







まず字引を手元においておくこと。

これは大学に入ったばかりのころにも、担当の先生に言われました。

 「文章を書く上で、ちゃんと使う語句のことを知っていないといけない。

たとえば、××と○○(例を忘れた…)の意味の違いを説明できるか」

沈黙。分かっているようで分からない。身近なことなのに。



読んでいて意外に思ったのは、感想文は大人でも難しいという話。

ぼくは感想文がまったく書けない人間で、

なんとかこしらえても「これは感想文じゃない」という評価をもらってたくらい。

書けなくて困り果てていたけれど、何も不思議なことじゃなかった。

大人でも難しいことを子どもにさせようってのがそもそも変なんだよね。

感想文の代わりに、観察文、要約文の提案をしている。

よく観察して、要約して、報告することのが大事だと。

ちょっとこれから意識して書いてみます。


Amazon→『井上ひさしと141人の仲間たちの作文教室 (新潮文庫)

静かな夜に


訃報がきた。


2年前、ドイツ留学でいっしょだった方だった。


その方は確か定年退職されてから、学びたいことがあるからと大学に入られたといっていた。ちょっとおちゃめな、話しかけやすい方だったと思う。後にも先にもそのときから会うことはなかったけど。


その1年後くらいに、いっしょに留学した子と再会した。そのときに少し、その方の話題が出た。学部のカリキュラムでまた留学してるはずのその方は、どういうわけか結局留学していないという話を聞いた。留学のときも、あまりドイツでの生活は合わない、といっていたのを思い出す。


仕事をやめた後に、学びたいことがあるからと大学に入られた姿をみて、こういう生き方ができたらいいなと思ったのがもう2年以上前。ドイツでとった写真には、笑顔が多かった方だった。正直今も実感が持てない。ああ、陳腐なことばだけれど、御冥福をお祈り申しあげます。


2009/10/22

堀正岳,佐々木正悟『iPhone情報整理術 ~あなたを情報’’強者’’に変える57の活用法!』

Phoneを使い出して10日。

いろんな方のiPhoneの使い方をネットで追いながら、

どう使うのがいいんだろうなぁ

何ができるのかな

と悩んでいました。



そこにでたのがこの本。

情報の管理、ぼくの場合だと論文をPDFでiPhoneに入れて見てみたり

あるいはライフログをiPhoneを使って行ってみたり。

そんなアプリがあるんだ、そんなこともできるんだ、

といったhacks本を読んでいるような印象。



iPhoneを持っている人にとっては、へぇそういう使い方もあるのという印象の反面

持っていない人にとっては、こういうことができるツールなんだ、と

iPhoneを知るのにも使えそうな本。

アプリについては、本+ネットで似たようなアプリを探して

検討してみるほうがいいかも。



情報をすべてiPhoneに、というのはできないケースもあると思いますが、

ぼくには大いに参考になりました。


Amazon→『iPhone情報整理術 ~あなたを情報’’強者’’に変える57の活用法!(デジタル仕事術シリーズ)

2009/10/03

司馬遼太郎『坂の上の雲(三)』

三巻では、開戦前後の話だけあって、陸海軍や政府のお偉方がいっぱいでている。

その中には、日本史の教科書でみたことのある人物もいっぱいいる。

旧友であっても人事で譲ることはしない山本権兵衛。

大丈夫なのかと言われつつも、無口だけど、この人なら大丈夫そうという風格が作中でにじみ出ている東郷平八郎。

日英同盟をあてにできない、自分が何とかする!と日露協約に動く伊藤博文、

それを苦く思う桂太郎(当時の総理大臣)など。(もしかしたら、三巻以外ででたかもしれないが。)

日本史を学んでいるときにこの作品に出会っていたら、もう少し近代史に興味を持っただろうか、なんて考えもよぎるくらい。

そのくらい、それぞれの人物がおもしろい。



ちなみにぼくは、広瀬武夫という人物が好きだ。

広瀬の船が浸水し、そこから脱出するときにひとり見当たらない杉野を、

部下に止められるまで三回も探しに行く。

また、ボートで脱出したときには、おそらく敵軍からの砲撃を恐れながら

漕いでいる隊員を励まし、「おれの顔をみておれ。見ながら漕ぐんだ」と声をかける。

その姿から、ぐっとくるものがあった。


Amazon→『坂の上の雲〈3〉 (文春文庫)